視覚障害者のための福祉施設「神奈川県ライトセンター」

 横浜市にある視覚障害者のための福祉施設「神奈川県ライトセンター」を見学してきました。点字図書や録音図書、運動施設などが充実していて、大勢のボランティアの人たちの協力で成り立っていることが分かりました。その一部を紹介します。

2018年11月3日(丸山博)

 

 神奈川県ライトセンターは、神奈川県が設置し、日本赤十字社が運営している施設です。神奈川県内在住または在勤・在学の視覚障害者は無料で利用できます。場所は相鉄線二俣川駅から徒歩で15分、バスで5分(「ライトセンター前」で下車)ほどです。神奈川県立がんセンターの真向かいで、神奈川県警運転免許センターの隣です。

 

 事前予約もせず初めて訪問したにも関わらず、「PXE Japan」のホームページにライトセンターのことを掲載させていただきたいとお願いしてみました。すると、支援課の村松里恵さんと、同課課長の船津久志さんが私の話を親身に聞いてくれ、館内をくまなく、ていねいに案内してくれました。

 

 同施設は神奈川県内在住または在勤・在学している人しか使えないので、村松さんは、「PXE Japan」の神奈川県以外のメンバーのために、埼玉県や千葉県の同様の施設についても調べ、連絡先などを教えてくれました。

 

 ライトセンターの中で私が最も興味深く思ったのは、点字・録音図書の豊富さです。点字図書のタイトル数は約2万点。1タイトルで数巻になることがあるので、計約7万7000巻にもなります。CDやテープなどの録音図書もタイトル数で約1万3000点あります。書庫にある図書をすべて合わせると、計約3万3000タイトル、18万巻という膨大な量です。内容は文学、児童書を中心に、社会科学、自然科学、歴史、哲学、芸術、技術、産業など幅広い分野を網羅しています。

 それらの図書はすべて、ボランティアの人たちが点字にしたり、録音したりして数十年に渡って作ってきたとのことです。機械で自動的に作られるわけではありません。すべて人の手で一文字一文字点字を打ち込んだり、文章を読んで録音したりしなければなりません。「人間の善意で成り立っているんですね」と私が尋ねると、船津支援課長は「そうなんです。みなさんの善意なんです」とにこやかにうなずいていました。

 書庫と同じ階には、大小いくつもの録音室があります。さまざまなジャンルの本をボランティアの人たちが「音訳」し、録音しています。私が見学に訪れたときも、数カ所の部屋で「使用中」の赤い文字が点灯していました。「週刊現代」などの週刊誌を発売翌日には録音し、その週のうちに希望者に発送するサービスも提供しているそうです。

 点字図書や録音図書は、ライトセンターに直接来て借りることもできるし、自宅まで送ってもらって借りることもできます。また、「サピエ」という全国規模の点字・音声データ提供ネットワークを使って、ライトセンターや全国の点字図書館のデータを自分のパソコンやスマートフォンにダウンロードすることができます。サピエの利用には登録が必要です。

サピエについては以下のホームページに詳しく載っています。

https://www.sapie.or.jp/cgi-bin/CN1WWW


 

 神奈川県ライトセンターの起源は、日本赤十字社神奈川県支部が1955年に始めた点字図書貸し出し事業「愛の赤十字文庫」にあるそうです。当時、点字を覚えるための講習会も開き、講習修了者たちは「点訳赤十字奉仕団」を結成し、点訳図書作りだけでなく、視覚障害者とのさまざまな交流事業を行ったとのことです。その後、神奈川県が点字図書館を作り、それが後のライトセンターとなり、現在は日本赤十字社が指定管理者として運営しています。

 ライトセンターで活動しているボランティアは約700人。その人たちが、点訳、録音などの他、誘導、在宅者援助、ITサポートなどの活動をして視覚障害者の生活を支えています。

 

 以上、主に点字、録音図書について書きましたが、ライトセンターには他にも講習室、体育館、ジョギングコース、温水プール、トレーニングジム、卓球室、キッズルームなどさまざまな施設が充実しています。また、日常生活に密着した用具も展示していて、音声時計や触読(しょくどく)時計、音声で知らせてくれる体温計や血圧計なども使ってみることができます。

 

 11月10日(土)には年に一度のライトセンターフェスティバルがあり、大勢の人が訪れるようなので、施設見学も兼ねて訪れてみてはいかがでしょうか?



 音を聞いてプレーするサウンドテーブルテニスの道具
音を聞いてプレーするサウンドテーブルテニスの道具

  最後に、神奈川県ライトセンターのパフレットに書かれている「日本赤十字社とは・・・」という文章を紹介させていただきます。

 

 「赤十字は『人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性』という7つの普遍的な原則のもとに、世界最大のネットワークを駆使し、行動する人道機関です。これからも、国境、宗教、人種を超えて、人の命の尊厳を守るため、様々な人道活動を推進します」

 

 その理念を体現する人たちが視覚障害者とその家族を支えてくれているのだと、神奈川県ライトセンターを見学して感じることができました。

 

問い合わせは

神奈川県ライトセンター

横浜市旭区二俣川1ー80ー2

電話:(045・364・0023)

ホームページ:http://www.kanagawalc.org